解雇話しから、障害年金裁定請求・雇用継続
ある日、社会保険労務士Mはある建設業関係の会社社長から電話を受けました。内容は、「視野狭窄となった社員を解雇したいがどうしたら良いか」というものでした。あまりにも突然な話だったために、「すぐに伺います」と言って電話を切り会社に向かいました。
社長の話では、対象の社員は1級施工管理技士の資格を持ち、現場監督をしていた勤続20年のベテラン社員だが、視野狭窄となってしまったため、自動車の運転はもちろん現場監督業務も出来ない、パソコンを打たせても間違いが多いとのことで、いまの給与では雇い続けられないから解雇したいとのことでした。
対象社員も会社内にいましたので話を聞いたところ、数年前から視野狭窄が始まり、現在は大学病院で定期的に治療を受けている、いままでみたいな仕事は出来ないので、賃金減少はやむを得ないが出来れば雇用を継続してもらいたい、とのことでした。
社長に対象社員の希望を伝え、障害年金の裁定請求を行い、支給裁定があれば年金受給額相当分を減給することで雇用を継続できないかと提案したところ、社長も対象社員は知識も経験も豊富だから、給与を抑えられるのならば雇用継続も可能かもしれないとのことでした。とりあえず、障害年金の可能性を探ってみようとのことで、対象社員の次回診療日にMも同席し、主治医から障害状況の説明を受けるとともに、障害年金制度について説明し、障害認定の可能性について意見を聞きました。
担当医の話では、現在でも障害厚生年金2級に該当する可能性はあるので、裁定請求してみる価値はあるとのことで、診断書の作成を受諾してくれました。また、裁定請求に必要な費用、社会保険労務士報酬等も会社が負担してくれることとなり、無事裁定請求を行いました。
結果は、障害厚生年金2級の裁定があり、障害年金は非課税であるため、社会保険料、所得税、市民税が大幅減額となることから、手取金額は以前と変わらないように給与を設定し、雇用を継続しました。
その後、会社は障害者雇用基準を満たし、経営事項審査の評点もアップしたため、受注にもプラスになったと喜んでいます。